長江春子(胡春平)　NAGAE Haruko（HU Chun Ping）

紐を用いた中国伝統工芸「中国結び」の作品です。「春」は私の日本名と中国名に共通する漢字です。15 歳を境目に国籍、名前、ことば、文化、生活環境が変わり、貧困、生きづらさ、アイデンティティの揺れに苦しんだ経験もありますが、ずっと変わらない「私らしさ」を象徴するこの「春」という字を作品のテーマにしました。切れ目なく一本の紐で結べた「春」。春は明るい。春は暖かい。春は平和。春は希望。そんな気持ちを込め、一面に咲く花の丘から立ち昇る「希望の春」を表現しました。2022年明けから芸術家のみなみりょうこさんに師事し本格的に学び始めた中国結び。多国籍展に応募することが学びと創作のモチベーションにもつながりました。

私は日本と中国のダブルです。中国に生まれ育ち、15 歳で日本に移住しました。日本語や日本文化を身に着けるのに長い年月がかかりました。自分が何者かと悩む時期も長くありました。日本の中高校、大学で学んだあと、青年海外協力隊日本語教師隊員として中国の大学に2年間赴任しました。それ以来、日本と中国、日本と海外の若い世代間の交流に携わってきました。近年は日本国内の多文化共生プロジェクトに取り組んでいます。自身の多文化体験も若い世代のための学びと交流の場づくりに役立つことを願っています。その多文化体験をヒューマンライブラリーや自著『小春のあしあと』(a-Nest 出版、2021、Amazon)でも紹介しています。