デジタル葬儀

Lily Rinae
東京都杉並区
365×254 cm

この写真集は、台湾にいる祖母が亡くなったにも関わらず、新型コロナの状況下、入国手段がなく葬儀に行けない悲しい私達家族の現実を写真に収めた作品です。結果、我々はインターネットを駆使してお通夜から葬式、納骨までをライブ配信してもらいデジタルで参加しました。日本に移民としてきて懸命に働いてきた私達がコロナで祖国に帰れない、そんな悲痛な状況を忘れないためにも記録しました。

私の両親は45年前、台湾から日本に移り住んだ在日台湾人です。当時は携帯電話や電子辞書などはなく、慣れない言葉や生活習慣の中で、父親はラーメン屋を営み、東京を基盤に自身の道を切り開いてきました。
両親は毎年1回は台湾に戻り、子供である私や兄に台湾の祖父母や伯父伯母、従兄弟と会う機会を与えてくれ、日本と台湾間での交流を大切にしてきました。

今年4月に祖母が寿命を全うして100歳で亡くなりました。
時は2020年、新型コロナウィルス感染対策に終われる真っ只中。
私達一家はお葬式に参加もすることも、おばあちゃんの顔を見てさよならを言うことさえも出来ませんでした。台湾は厳しい隔離体制を行なっているため入国審査は厳重で、たとえ台湾に到着しても2週間の強制隔離が待っていたのです。これでは親戚一同にも迷惑をかけると、父は東京に残る判断をしました。
祖母が亡くなる前私達一家は、台湾のコロナ対策を誇らしく感じていましたが、その対策に結果、私達自身が首を絞められる結果となってしまったのです。

父親の泣き声を聞いたのは、人生で初めてです。深い嗚咽が、晴れた日の東京の青空に響きました。自分の母親の死に目に会えない、そんな辛いことはないでしょう。祖母はずっと、遠くの台湾から父親が日本で頑張る姿を応援していました。その父親の選択肢の延長線上に、最後の別れを言えない悲劇が来るとは想像もしていませんでした。

父親のために、そして私達家族のために、祖母のお葬式は全てインターネットを介して中継してもらいました。お通夜、お経、お葬式、骨壷を納めるところまで。台湾のお坊さんも、会場で父親や私達の名前を読み上げてくれました。
こちらはiPadに祖母の遺影を写しました。自動消灯モードを切ったので、3日間スクリーン上で祖母は輝いていました。
窓から強めの、でも柔らかくて温かい風が吹き、私の頬を触れました。天国に行く前に、おばあちゃんが東京にも寄ってくれたようです。

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