多文化社会に取り組む団体紹介

展示室3:活動展示

多文化社会に向き合う団体紹介

国内には多文化社会の在りようを探るさまざまな団体が活動しています。なかには文化芸術を積極的に取り込む事例もあり、日々実践を重ねながら、それぞれの願う風景を現代社会に映し出そうとしているようです。ここでは、そうした団体の活動内容について紹介するとともに、彼らとのトークセッションをご覧いただけます。

トークセッション vol.1
世界とつながる子どもとアート
トークセッション vol.2
多文化東京の今

多文化社会に取り組む団体紹介

多文化社会に取り組む団体紹介

特定非営利活動法人
アデイアベバ・エチオピア協会

  • 活動期間

    2009年〜現在

  • 活動場所

    東京都葛飾区

  • プロジェクト

    季節毎の交流会やアートクラブを含む様々なプロジェクトを開催

  • 概要

    東京に住むエチオピア人の半数が葛飾区に住んでおり、地域の住民として助け合い楽しむことを目的に、文化交流会などを続けています。年3回の交流会ではエチオピア料理やダンスで盛り上がり、地域のイベントにも多数参加しています。在日エチオピア人によるアート作品や彼らが取材された作品とエチオピア文化の展示、コーヒーセレモニー、自由に楽しむ「アートクラブ」など多様な活動を行っています。

  • ここがポイント

    近年、協会のイベントを通して日本人のボランティアが増え、協会として葛飾区のお祭りでオリジナルの「エチオピア盆踊り」を披露するなどユニークな形でエチオピアの魅力を伝えています。文化活動以外にも、難民の方を含む在日エチオピア人への支援や、本国エチオピアへの支援を行っています。幅広い活動を通じて、地域に根差し「関わっていく」取り組みが特徴です。

  • WEBサイト

    https://adeyabebaethiopia.webs.com
  • アートへの期待

    自分の文化やその人なりの表現ができること。また、一緒にアートを楽しむことで、人との距離が近くなり、エチオピアの文化を体験したり感じることで興味をもってもらえます。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    エチオピアの伝統文化だけでなく、現代文化や、個々人の日本での経験・日本文化もミックスした表現を考えること、働くエチオピア人にとって興味が湧きやすい生活や仕事に関することを取り入れるなどの工夫をしています。

多文化社会に取り組む団体紹介

武蔵野美術大学・カシオ計算機株式会社

  • 活動期間

    2017年〜現在

  • 活動場所

    東京都小平市及び都内各所

  • プロジェクト

    にっぽん多文化共生発信プロジェクト

  • 概要

    本プロジェクトは、カシオ計算機と武蔵野美術大学の産学連携事業として取り組まれています。武蔵野美術大学の上級日本語科目を履修した学生とカシオ社員がチームを組んで、多文化社会を支える取り組みに携わる個人や団体を取材し、ドキュメンタリー映像を制作します。制作したドキュメンタリーとプロジェクト全体の記録は、プロジェクトのWEBサイトで公開しています。プロジェクトを通じて、アート・デザインを学ぶ学生たちが、多文化社会のもつ魅力と課題を学びながら、多文化共生を自分ごととしていくことをめざします。同時に、学生たちの制作した作品と学生たちの学びの軌跡を公開することで、共に多文化共生について考えていく社会を築くことを目的としています。

  • ここがポイント

    日本語の授業でありながら、「多文化共生社会とは具体的にはどんな社会か?」と学生への問いかけから始まるこのプロジェクトの見所は、この授業を受講する日本の学生と留学生、そしてカシオの職員の方々がフィールドワークやインタビュー、映像制作を通して「多文化共生社会」に向きあっていくところです。メイキング映像にある学生たちやカシオの方々のさまざまな「気づき」をぜひご覧いただきたいです。

  • WEBサイト

    https://web.casio.jp/mau/
  • メイキング映像

    https://web.casio.jp/mau/works2019/index.html
  • アートへの期待

    アート・デザインを活動に取り入れることで、より多くの人にメッセージが伝わる表現になると期待しています。多文化共生について広く関心を喚起し、それぞれが自身の問題として捉えるということを目指していますが、それは大変難しい課題です。アート・デザインによって、考える場をデザインすることで、少しでも多くの人と共に多文化共生について考える機会をつくることができればと考えています。一方で、美大が取り組むプロジェクトとしては、アートやデザインの分野においても、多文化共生が社会課題としてあることを認識してほしいという思いがあります。アート・デザインと多文化共生を結ぶプロジェクトを行うことで、アートやデザインの領域の人たちにも多文化共生について考えてほしいと考えています。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    アートはしばしば結果としての作品の完成度に目がいきます。しかし、このプロジェクトは、作品と同時に、そこにたどり着くプロセスに、多文化共生とは何かという問いが含まれています。プロジェクトのプロセスをどのように共有していくかが課題だと思います。その一つの答えとして、本プロジェクトでは、ドキュメンタリー制作のドキュメンタリーをもう一つの作品として公開しています。

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多文化社会に取り組む団体紹介

一般社団法人kuriya

  • 活動期間

    2016年〜現在

  • 活動場所

    東京都

  • プロジェクト

    居場所づくり事業の一環としてBetweens Passport Initiativeを実施

  • 概要

    一般社団法人kuriyaは外国ルーツの若者たち=未来の可能性と捉え、たくさんの可能性を持つ外国ルーツの高校生や若者が、希望を持って未来を描ける社会をつくることを目指して、高校でのキャリア教育のプログラムや学校外での居場所づくりを実施しています。外国ルーツの高校生や若者の多様性を育て、日本社会とをつなぐことで、共生社会を実現することを理念としています。外国ルーツの高校生の中退率は日本人の7倍と高く、また大学への進学率も約4割(日本人は約7割)であり、彼らが未来を希望を持って描けない、厳しい現状があります。そのような課題に対して、私たちは事業を通じて、①高校からの中退を予防し、卒業後の進路につなげる事。②外国ルーツである事に自信をつけ、エンパワメントする事。③外国ルーツの高校生や若者が、その多様性を育めるための仕組みづくりを目的としています。

  • ここがポイント

    kuriyaでは、国内の活動だけに留まらず、東京、香港、ペナンのアジア3つの都市を結ぶプロジェクト「Moving Story」も実践していました。このプロジェクトでは、支援の対象としてではなく、人材育成の一環としてアートを通じたエンパワメントプログラムを実践している個人/NPOの国際連携共同で展開。次世代のリーダーを育成することを目的として、写真や映像制作等のアート活動を題材とし、多くの共通性を持つアジア圏の国々と、その取り組みや課題について情報共有し、各国の活動を国際的なネットワークとしてつなげることで課題解決に向けたネットワークの構築とプラットフォームの多文化な人材形成の基盤づくりを行なっていました。

  • WEBサイト

    http://kuriya.co/
  • アートへの期待

    アート活動に対して特に効果をもとめるものではないと思っています。アートを通じて多様な価値観に触れたり、自分とは異なる世界を知るきっかけにはなると思いますが、それを通じてどのような効果があるかは人それぞれでいいのではないかと思っています。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    移民のユースが搾取されてしまうことです。移民のユースのおかれている環境や、抱えている背景を考慮せず芸術文化関係者の興味関心や知的好奇心を満たすためだけに移民のユースの参加を求めることを懸念しています。

  • トークセッション vol.2 多文化東京の今

多文化社会に取り組む団体紹介

公益財団法人
国際文化フォーラム

  • 活動期間

    1987年〜現在

  • 活動場所

    東京都文京区

  • プロジェクト

    多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿」(2017年〜現在、年一回)

  • 概要

    公益財団法人国際文化フォーラム(TJF)は、多様なことばと文化を背景に持つ若い世代が協力して「一人ひとりの個性を尊重し、多様性に富み、創造力を育む社会」を創れるようになることを目指しています。その事業の一つである本活動は、様々な文化的ルーツを持つ高校生と多様なことばや文化に興味を持つ日本人高校生が参加する合宿です。合宿の交流活動(身体表現、造形表現、音やリズムをテーマにしたワークショップ)を通じて、ことばと身体で自分を表現する力や創造性を刺激し合い、異なる他者を理解する力、協働し、バックグラウンドの違いを超えてコミュニケーションを図る力、多様性を尊重する力を育むことを目指します。

  • ここがポイント

    アーティストが表現力を伸ばす独自のプログラムを作り、ファシリテーターとして参加者の自己開示を促す役割も担っています。また、合宿参加者のOB・OGが学生サポーターとして、高校生のコミュニケーションのサポートを行なっていることから、主催スタッフ以外に様々な担い手が活動に携わっています。参加者一人ひとりへの手厚いサポートがあることが特徴です。

  • WEBサイト

    https://www.tjf.or.jp/performance/ https://www.tjf.or.jp
  • アートへの期待

    アートの力を借りれば、言語や文化の壁を乗り越えやすいと考えます。また、アートは参加者の感性に訴え、自己開示や共感を促します。アートの創作活動は多様な発想や経験を引き出し、参加者の多様性が生かされ、共通の創作課題の遂行は協働を必要とし、対話を生み出します。そして、活動の成果として目に見える「作品」を残すことができるため、達成感を味わえます。「作品」の発表・展示は、参加者以外の人びとに向けたメッセージ発信にもなります。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    芸術やアートと聞いただけで、ハードルの高さを感じてしまう高校生も多いです。人前で表現したくない、 恥ずかしい、知らない人と関わるのは苦手、などの理由で申し込んでこない子もいるのが現状です。そのようなイメージを払拭するために、広報で工夫しなければなりません。参加者が安心できる環境づくりに気を配り、自己開示しやすいように心がけていますが、心を無防備にすると傷つきやすくなる危険性もあり、性急に求めてはいけないし、「開き方」だけでなく「閉じ方」も知っておかなければならないと、多文化精神クリニックの専門家からのアドバイスを頂いたので、ファシリテーターやサポーター、運営スタッフで共有していきたいです。

  • トークセッション vol.1 世界とつながる子供とアート

多文化社会に取り組む団体紹介

マルパ実行委員会
事務局:(公財)かながわ国際交流財団

  • 活動期間

    2016年〜現在

  • 活動場所

    神奈川県内

  • プロジェクト

    マルパ:MULPA(Museum UnLearning Program for All みんなで“まなびほぐす”美術館―社会を包む教育普及事業)

  • 概要

    マルパでは、外国につながる人たち(若者・こどもたちなど)や障がいのある人たちの社会包摂を目的とした教育普及事業を神奈川県立近代美術館、茅ケ崎市美術館、平塚市美術館、横須賀美術館、藤沢市アートスペースと行なっています。2019年3月に2回にわたって開催された撮影会「多文化ユース・フォトセッションin三浦半島」では、横浜市、横須賀市、平塚市等に住む多文化な背景を持つこども・若者たち(延べ 27 名)が、葉山・横須賀など三浦半島の風景写真の撮影会に参加しました。このプロジェクトでは、参加者一人ひとりのエンパワーメントや参加者同士の仲間づくりを目的に実施されました。

  • ここがポイント

    マルパを構成する各美術館の教育普及事業で得られた経験を研修会・フォーラム等で発信・共有し、県内の美術館・博物館全体にインクルーシブ化・多文化化を波及させることを目指しています。

  • WEBサイト

    http://www.kifjp.org/mulpa/
  • アートへの期待

    県内の美術館・博物館等公的機関のインクルーシブ化・多文化化に寄与すると考えます。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    特にありません。

多文化社会に取り組む団体紹介

神奈川県・神奈川県立地球市民かながわプラザ
指定管理者:公益社団法人青年海外協力協会

  • 活動期間

    1981年〜現在、二年に一回

  • 活動場所

    神奈川県横浜市栄区

  • プロジェクト

    カナガワビエンナーレ国際児童画展

  • 概要

    神奈川県が提唱した「民際外交」の事業の一つとして、1979年の「国際児童年」制定をきっかけに「カナガワビエンナーレ国際児童画展」が誕生しました。同展は絵画を通じて未来を担う世界の子どもたちの夢と創造力をはぐくみ、異なる文化や生活を互いに理解し合い、国際交流を深めることを目的としています。海外や神奈川県在住・在学の4歳~15歳の児童・生徒を対象に作品を募集し、審査を経て、表彰式および展覧会を開催しています。日本において、外国にルーツを持つ子どもたちが年々増えているなか、多文化共生の観点から、全国の外国人学校に在学・通学している児童・生徒も対象にしています。

  • ここがポイント

    1981年の第1回展からの入選作品のほとんどを神奈川県立地球市民かながわプラザで収蔵しています。本展での入選作品展示以外にも、入選作品の館外貸し出し(一部制限あり)を実施し、世界の児童画に触れる機会を広める活動を行っています。

  • WEBサイト

    https://www.earthplaza.jp/biennial/index.html
  • アートへの期待

    毎回100前後の国・地域から参加があり、これまで160の国・地域から70万点(神奈川県からの出品を含む)が届きました。アートを通じて、子どもたちの豊かな表現力と創造力をはぐくみ、それらの絵を通じて、人々が世界の多様な文化や生活などを理解することを期待しています。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    “難しいこと”は特に感じません。むしろ楽しいです。
    ただ、実務面では、デジタルではなく、原画を郵送してもらうことにこだわっているために、世界中から子どもの絵を集める際、難しい側面は常にあります。1つ目は、応募者が作品を郵送するのに時間や費用がかかることです。2つ目は、国の情勢に参加が左右されることです。具体的には、政情不安、災害、郵便事情や日本との関係悪化などです。特に今年はコロナ禍によって、応募がいっそう難しくなっています。

  • トークセッション vol.1 世界とつながる子供とアート

多文化社会に取り組む団体紹介

NPO法人
多文化共生リソースセンター東海

  • 活動期間

    2012年〜現在

  • 活動場所

    愛知県、名古屋市(2012, 2014, 2015)豊橋市(2017)安城市(2019)

  • プロジェクト

    あいち多文化映画祭

  • 概要

    当団体では、日本に居住する外国人及び日本人に対して、多文化共生社会の実現に向けた活動の促進に関する事業を行い、在住外国人と日本人、また在住外国人同士、日本人同士の連携・協働・共生に係る問題の改善や解決を図ることで、多文化共生社会の実現に寄与することを目的に活動しています。 その一環として展開している「あいち多文化映画祭」は、2012年に名古屋市で開催された日本語教育国際研究大会で、学会員以外の方が楽しめる参加機会の一つとして企画・実施した「多文化映画祭」に大勢の参加が得られたことをきっかけに、日頃当団体の活動に関わりのない人々にも「多文化共生」に触れていただける機会として継続的に実施しています。

  • ここがポイント

    NPO法人多文化共生リソースセンター東海では、日本語学習支援など多文化共生社会の実現に向けたさまざまな活動を行なっています。しかし、研修会やセミナーなどを企画しても参加してくださるのは、いつも同じ顔ぶれだったことに危機感を感じて始まったのが「あいち多文化映画祭」だったようです。だれでも気軽に楽しめる「映画」をツールにすることで、さまざまなルーツを持つ方々に参加してもらえるように取り組んでいます。また、ただ映画を観るだけでなく、鑑賞後に感想を言い合ったり、映画が伝えようとしているメッセージについて考えたりすることでお互いの文化の違いや共通点への理解を深めていく“交流型の映画祭”を実践しているところが「あいち多文化映画祭」の特徴です。

  • WEBサイト

    http://mrc-t.blogspot.com/
  • 参加者インタビュー映像

    https://youtu.be/ZXclX9z1wRs
  • アートへの期待

    講演会や研修会等に比べて、「映画」を入り口にすることで、参加者にとっての参加ハードルが低くなり、気軽に参加できるようになるとともに、さまざまな切り口からアプローチできるようになるように思います。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    ・映画上映の場合、上映料や上映機材等にかかるコスト負担が大きくなるため、頻繁には開催できない。
    ・作品を見てもらうだけでは、理解や感想が個々人の中で留まってしまうため、参加者全体で共有したり、言葉を交わして理解を深めていったりする仕掛けが必要になる。

多文化社会に取り組む団体紹介

みえ市民活動ボランティアセンター
多文化理解イベント実行委員会:三重県/公益財団法人三重県国際交流財団(MIEF)/JICA三重県デスク

  • 活動期間

    2014年〜現在

  • 活動場所

    三重県津市及びみえ市民活動ボランティアセンター

  • プロジェクト

    多文化共生理解イベント Hand in Hand

  • 概要

    国籍や民族などの異なる人びとが、お互いの文化的な違いを認め合い、対等な関係のもとで、地域社会を一緒に築いていく「多文化共生社会づくり」に三重県では取り組んでいます。その一環として展開している「多文化共生理解イベント Hand in Hand」では、日本人や在留外国人、留学生とともに毎回特定の地域や国を選んで、その場所の歴史や文化を学ぶ交流の場を設けています。この妄想旅行で訪れた国の歴史、文化等を知ってもらうことで、外国の暮らし、またその国の出身者である外国人住民に対しても理解を深めることを目的としています。

  • ここがポイント

    「多文化共生理解イベント Hand in Hand」の一環として実施されている「妄想世界旅行」では、演劇や音楽、映像制作といったような芸術表現を主軸においた活動ではないものの、多文化理解を促進するひとつの方法として、各国の文化を学ぶ講座を「世界旅行」に見立てて行なっているところがユニークです。

  • WEBサイト

    「多文化共生理解イベント Hand in Hand」FBページ https://www.mienpo.net//
  • アートへの期待

    芸術活動は取り入れていません。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    芸術活動は取り入れていません。

多文化社会に取り組む団体紹介

東京外国語大学

  • 活動期間

    2014年〜現在

  • 活動場所

    群馬県大泉町

  • プロジェクト

    ポルトガル語劇のブラジル人コミュニティ出張公演

  • 概要

    本学の大学祭「外語祭」では、2年次の学生が各自専攻する言語で演劇を上演する伝統があります。そのために春から練習を積んでいますが、たった一回だけの上演ではもったいないと思い、せっかくならば国内に在住するブラジル人の方々に観てもらいたいと思ったところから始まりました。2014年以降、ふだんなかなか母国の文化に触れることのない在日ブラジル人の児童生徒に母国の文芸や伝統を知る機会を用意することのほか、日本の住民にはブラジルの文化を知ってもらい、ブラジルに対する理解を深め、ひいてはブラジルの人々を身近に感じてもらうことを目的として行なっています。 今後の目標は、地元のブラジルと日本の子どもたちの交流の場にすることです。 観客もブラジル人が大半で、交流は、演劇公演と上演後に観客と少し触れあうだけにとどまっていますが、将来的には地元の学校から日本人の子どもたちにも来てもらうほか、本学からも日本人の学生以外にブラジルからの留学生も交え、深い交流ができる場をつくりたいと考えています。

  • ここがポイント

    大学祭の演目だけ留まらず、ブラジルにルーツを持つ方が多く住む群馬県・大泉で出張公演を行なっています。各国の言語を学ぶだけでなく、文化的な交流を通して海外にルーツを持つ方を含む地域住民と在学生・留学生の関係性を構築していくことを目指しているのが特徴です。

  • アートへの期待

    〔対在日ブラジル人コミュニティ〕
    ブラジルの文学、演劇に触れる機会があまりない在日ブラジル人コミュニティの人々にとってはそれに親しむ貴重な機会となっています。演目はたいがいブラジルの演劇を代表する作品であるため、とりわけブラジル人児童にとってはブラジルの重要な演劇を学ぶよい機会となっています。
    〔多文化共生社会実現の観点から〕
    日本人住民にはブラジル文化を知ってもらう機会として考えています。
    ブラジル人住民ばかりでなく、日本人住民に対しても広報を行なうため、日伯双方の住民の交流の場を提供しています。
    〔学生への教育的効果〕
    言語教育の一環として行なわれているポルトガル語劇を、本国ブラジル出身の観客に向けて上演することは、学生にとって大きな刺激であり、取り組みにもいっそう熱が入り、貴重な学びの体験になっています。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    著作権者の許可を得なくてはならないことが、コストや手続き面でハードルとなることもあり、演目はその手続きが不要な古典作品となることが多いのが現状です。

多文化社会に取り組む団体紹介

公益財団法人
可児市文化芸術振興財団

  • 活動期間

    2005年〜現在

  • 活動場所

    岐阜県可児市

  • プロジェクト

    多文化共生プロジェクト

  • 概要

    2018年度より鹿目由紀氏の脚本・演出のもと、ドキュメンタリー演劇の手法を取り入れた演劇作品を制作しています。海外にルーツのある方々を対象に参加者それぞれが持つエピソードを拾い上げていく過程で見えてくる、文化の違いや共通点を参加者同士で共有しています。また、一つの演劇作品を作りあげ発表することで、鑑賞者にも多文化共生のきっかけとなる機会を提供しています。本企画がきっかけで形成された参加者(鑑賞者含む)同士のコミュニティの継続ができるよう、年間を通して交流会やワークショップなども定期的に実施しています。

  • ここがポイント

    ドキュメンタリー演劇とは、出演者へのインタビューをもとに脚本を起こすという演劇手法です。海外にルーツを持つ方々へのインタビューから脚本が生み出され、その言葉を本人が語るので、ドラマとしての演技のおもしろさと、その人自身のリアルな姿について知るきっかけともなるのが特徴です。演劇の中の登場人物に彼/彼女たちの言葉を語ることで、自分自身の考え方にも向き合う機会になっているのかもしれません。

  • WEBサイト

    https://www.kpac.or.jp/
  • ドキュメント映像(2020)

    https://youtu.be/dO-53g4D1u0
  • アートへの期待

    演劇作品を一般の市民に成果を発表することで、参加者は自信や自己肯定感を高めることとなり、観客は異文化を知るきっかけにつながると考えます。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    参加者集めに一番苦労しています。特に自発的な参加が難しい層(日本語が話せず、限定のコミュニティのなかで生活している外国人など)に対して情報が届きにくいのが現状。劇場だけでは限界があり、専門機関や発信力のあるサポーターの協力が必要不可欠だと感じています。

多文化社会に取り組む団体紹介

東九条マダン実行委員会

  • 活動期間

    1993年~現在

  • 活動場所

    京都市南区東九条地域

  • プロジェクト

    東九条マダン

  • 概要

    多くの在日韓国・朝鮮人と日本人が共に暮らすまち、京都市南区東九条で地域のまつりとなることを目指して、1993年より始まった活動です。まつりの創造と開催、プンムル(朝鮮半島に伝わる打楽器などを用いた演奏や演舞)などの屋外パフォーマンス、野外劇、まつりを飾る美術造形物の制作と展示のほか、参加型のあそびや文化体験を企画しています。マダン 마당 とは、韓国語で「ひろば」という意味で、様々な立場、ルーツ、心身の状態、そしていろんな思いを持つ人々が、違いを受け入れながら、ありのままの自分を表現し、新しい自分を見つけていく場、そんな"みんなのまつり"を毎年つくり続けています。

  • ここがポイント

    東九条地域は、戦前戦後を通して朝鮮半島から渡ってきた人たちだけでなく、生活の場を求めて日本の各地から流入した人たちも抱き込んで地域を形成する、いわゆる大都市周縁に備わったダイナミズムを内包していた歴史を持っています。多様な背景を持つ人たちと地域住民とがともに、生活改善のための支援と運動を行ってきた素地があったことから、まちに住む人誰しもが主体となるまつりを模索してきました。特定の民族を越えた視点を、「まつり」を通して、90年代という早い時期から実践してきた団体です。

  • WEBサイト

    http://www.h-madang.com
  • アートへの期待

    東九条マダンは、30年近く活動を継続してきたことにより、個々のパフォーマンス技術が向上することはもちろんですが、様々な融合を生みだす創造の場となっています。また、違いを受け入れながら、ありのままの自分を表現し、新しい自分を見つけていく場にもなっています。例えば、朝鮮半島の大地とそこに暮らす人々の生活文化が生みだしたリズム(チャンダン)が、東九条に渡ってきた在日コリアンの記憶やそこで培われた歴史を経て、東九条マダン特有の表現形態を生みだしています。そのほか、韓国の打楽器セッションと日本の和太鼓の演奏とが融合した「和太鼓&サムルノリ」も誕生しました。また、1970年代から1990年代にかけて韓国で活発に演じられた「マダン劇」は、朝鮮半島の伝統仮面劇の要素を取り入れた演劇ですが、今の自分たちの状況や課題に即して毎年新しく作り直し上演しています。そのほかに、障がいを持つ子どもたち(グループ名称:サムルのたまご)といっしょに表現のプロセスをつくる韓国の打楽器セッション(サムルノリ)も行っています。毎年のまつり会場は、朝鮮半島の生活文化や東九条地域の歴史や特色をあわせ、オリジナリティーとクオリティーの高い造形で彩られています。当日まつり会場では即興アートも行われており、まつりという多様性と即興表現が組み合わさった風景が広がっています。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    一般的と断定はできませんが、アートという言葉では捉えきれない東九条マダンという創造的なまつりを捉えきれるかどうか懸念を感じています。決してきらびやかで華やかな芸術とはいえないかもしれませんが、生活の中にまつりがあること、まつりを準備するワクワクとした時間があること、ひろばで解き放たれる表現、役割、表現する一人一人の存在があるということ、そして東九条マダンを通していろんな人が出会い、いろんなものが受け継がれるということこそ、自分たちで育んだ文化であり、とても豊かな人間にとっての芸術的財産だと思っています。

多文化社会に取り組む団体紹介

写真:岩本順平

特定非営利活動法人
ダンスボックス

  • 活動期間

    2013年~現在

  • 活動場所

    兵庫県神戸市長田区

  • プロジェクト

    年間多数のプロジェクトを展開

  • 概要

    早くから渡来文化が入り、開けた土地であった長田のまち。とくに1868年兵庫港の開港以降、多様な住民を引き受ける歴史をもっています。西日本では第二の大きさをもつコリアン・コミュニティ、奄美・沖縄からの移住者コミュニティ、最近ではベトナムからの移住者が集住する“多住地域”であり、誰もが文化芸術活動に等しく触れることができる機会を創出し表現の自由が担保された場を継続することを目的に、この地域の特性を活かしたプログラムを行っています。

    【最近の活動の一例】
    ・多国籍ごちゃ混ぜカラオケ大会:奄美諸島の徳之島、ミャンマー、ベトナム、韓国、ペルー、インドをルーツとする人々による歌の音楽会
    ・鉄人広場で100人!どんちゃんパレード:新長田在住の在日コリアンの音楽家・舞踊家であるパクウォン氏と趙恵美氏を演出家として迎え、朝鮮半島の伝統芸能“プンムル(風物)”を用いて、子どもからお年寄りまでの地域住民と一緒に行った音楽パレード

  • 写真:岩本順平

  • 写真:岩本順平

  • ここがポイント

    NPOスタッフやアーティストが地域のコミュニティに入り込み、まちの人々と丁寧なコミュニケーションを紡ぐことからプロジェクトを立ち上げています。多様な文化を持つまちの人々との「出会い」をもとに表現を見つけていくため、個々のコミュニティが持つ文化をゆるやかに混ぜ合わせた、形式にとらわれないアウトプットが特徴的です。代表の横堀さんは、「様々な国籍の人だけでなく、長田に住む色んな『日本人』も活動に巻き込んでいきたい」と語っています。そこに、ダンスボックスの目指す多様性が垣間見れる気がします。

  • WEBサイト

    https://db-dancebox.org/
  • アートへの期待

    在住外国人の生活支援については、長田区ではどの地域に比べても充実していると考えています。しかしながら、支援する/される関係性の構造がなかなか変わらず、社会の制度では補いきれない事もあります。文化芸術活動を取り入れることで、関係性の構造を変容させていただくことに期待しています。

  • アートを取り入れる上で難しいこと

    表現は、楽しさや美しさ、人々を繋ぐと言う点を、うまく利用されてしまう可能性があります。その中に内包される暴力性や権力性に自覚する必要があるということ。政治的・社会的弱者による表現を搾取しないように、最大の注意を払うことを意識しています。

  • 写真:岩本順平